ねむい

睡魔と戦うのに忙しいので労働は別な人に任せたい

『ガールズ・シンドローム』 著:慎結

「ネムレルモリ」

あーちゃんの行動の全てがのん姉に向いている所が素敵です。
自分に振り向いてもらえないと判っていても尽くしたいあーちゃんの一途さと切なさにぐっときます。
お弁当のシーンの無力感は読んでて心が痛くなりますね。

「箱の中の姫君」

内藤さんが絹原さんに「死なないで!」と懇願するシーンが綺麗です。
たった一度だけ優しくしてくれた相手に対し「一緒に居てなんて言わないから、死なないでくれ」と相手を気遣って泣ける事はなんて美しいんだろう…と。
内藤さんは絹原さんに親切にされた時、「人に親切にされる」という当たり前の事を思い出したんじゃないかと思います。
そして絹原さんも内藤さんに頼まれた時に、何かを思い出したんじゃないかと思うのです。
内藤さんにとって絹原さんは絶望しかなかった世界に射した一筋の光なんじゃないかと。消えてほしくない光なんじゃないかと。

「夏の終わりに」

1シーンのみの短い作品ですが、2人の関係の深さを感じました。
4P目のさゆの横顔の美しさが、そのままリリカからの想いの強さなんじゃないかなと思いました。
「この町にはリリカがいた それでこれからもリリカがいる なかなかないね! そんなとこはっ」
は百合作品屈指の名言だと思います。もちろん、その後の
「リリカのにおい…」
も好きです。照れ隠しとしてそれをチョイスできる関係なんですよね。

青春の儚さともどかしさ

驚かせたり裏切られたり傷つけられたり叫んだり喧嘩したり離別したり…。
そんな切なくて辛い展開の多い作品ですが、終わり方はハッピーが多く読後感が心地よい一冊です。
作中の雰囲気はどちらかと言うと暗くてうっとおしいのですが、それも本書タイトルの『ガールズ・シンドローム』にふさわしいと思います。
不思議な気だるさの中で読む切ない物語の不思議な読後感、一度体験してみてはいかがでしょう。