ねむい

睡魔と戦うのに忙しいので労働は別な人に任せたい

『劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』感想

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ネタバレ有りです。



良い劇場作品を見た後は、興奮するよりもむしろ落ち着いて、胸がスッとして清々しい気分になる。
背筋を伸ばして顎を引いて、いつもより姿勢よく視線高く歩く。
『劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』を見た後もこの状態になった。

映画全体の感想としてはとても密度が高くて、100分程度の映画だとは思えない濃さだった。
たった100分の間に、1年生が加わり京都大会を抜け関西大会にまで突き進んでしまった。
たった100分の間に1クール分の物語がギッシリと詰め込まれていた。

最後の演奏シーンは濃く長く長く、劇場で観たこともあって非常に満足度の高いシーンだった。
楽器の演奏経験が無い人間としては、やはり動きで伝わりやすい打楽器系の作画が素晴らしかった。
1つ1つの所作が細かく描写されて、音だけで無く目でも充分に楽しめた。
映像作品で演奏シーンを見る魅力は、普通は見ることができない角度や距離で演奏を"見る"ことができる点にあると思っており、
奏者側から指揮者を見るシーンや、奏者の手元をアップにするシーンは映像と音がリンクしてより一層の臨場感を与えてくれた。
TVシリーズ響け!ユーフォニアム2』(以下ユーフォ2)は演奏シーンが少し物足りなく感じていたこともあって、本作の演奏シーンはそのフラストレーションを見事に解消してくれる名シーンだった。
リズと青い鳥」が流れ始めた時はめちゃくちゃ泣いた。その演奏を聴いただけで描写されていない北宇治吹奏楽部の半年間が見えた気がした。


久石奏について。
本作を見る半日前まで『ユーフォ2』を見ていた。
『ユーフォ2』では、部内のゴタゴタではなく個人や個人間の問題(傘木希美と鎧塚みぞれ、田中あすか高坂麗奈)が中心に据えられていたため、本作のギスギスは非常にショックが大きかった。
特に久石奏の見透かしたような揶揄うような振る舞いに胃が痛くなったし、『ユーフォ2』の雰囲気を返して欲しいと何度も思った。
けれど久石奏が誰にでもある"挫折の象徴"であることを知ってからは一気に好感度が上がった。
努力が認められなかったり裏切られたりすると、人は斜に構えて真っすぐに物事に取り組むことができなくなっていく。
そんな誰にでも経験のある事によって歪んでしまった久石奏の「頑張るって何ですか?」という問いに久美子が「努力で何も得られなかったとしても努力そのものに意味と価値がある」と答えたことで、見ている私も少しだけ心が軽くなったし、久しぶりに何かに必死になってみたいと思った。今も思ってる。


百合的な観点としては、久美子の始まりが麗奈の涙だったり、吉川優子の涙は中川夏紀しか知らないし吉川優子も涙を見せていい相手だと認識してるんだよな…とか。
「お2人の距離、近くないですか?」って拗らせた百合オタクの妄言じゃなかったのはビックリした。


久美子3年生編決定は本当にめでたいし久美子の卒業を見届けられるんだなと思うと本当に嬉しい。久美子が高校最後に何を得るのかを知りたい。
久美子部長率いる北宇治吹奏楽部がどんな演奏をするのか、とても楽しみ。
でも、なかよし川が卒部会で泣いてる姿も観たかった…。